鉄線かご型護岸工法

Go Index Back Last update 2004/03/04


鉄線かご型護岸はアルミ亜鉛メッキの鉄線かごに石を詰めた構造で、標準型(張タイプ)と多段積タイプとがある。
アルミ亜鉛メッキとすることで耐久性を確保し、河床洗掘に対しては護岸全体が柔軟に変形することで護岸機能はある程度残存すると考えられる。(従来のブロックのような剛な構造では基礎が洗掘されると一挙に破壊)
空隙がある構造であるため覆土(土が石の間隙に入る)することにより植生の回復が図れることから水辺環境の保全に有効な治水工法である。
従来のブロック張(積)護岸工法と同程度のコストであるため今後は多用されると思われる。
塩分濃度の高い河口部等でしよう可能なようにアルミ亜鉛メッキ線材をさらに被覆したものもある。
人頭大程度の石のある急流河川では線材の耐久性の面からそのままでは使用が難しい。

張タイプ
高水護岸に使用する場合は、覆土してしまえば完全に隠すことができ、通常の出水では覆土が失われることもないと考えられるために護岸がない場合と同様の状態とすることができる。
低水護岸に使用する場合は覆土しても下部から流失しやすい。2割程度の法勾配では蓋部の鉄線が露出すると滑りやすく危険であったり除草に支障となることが考えられる。
(滑りにくいように祖面加工された線材を使用した製品も開発されているが、2割の勾配では急過ぎていずれにしても人が歩くにはふさわしくない)
掃流力の大きな河川で低水護岸として使用すると、かご内部で石が動き下側に寄ってしまう。
低水部で護岸下部に垂らす構造とすると、河岸が単調になりやすい。
以上より、張タイプは低水護岸に使用するには適さない場合が多い。
堤防の高水護岸に使用する場合、下面に遮水シートを敷くこととなるが、かごの線材がシートに食い込むこととなり、シートの遮水性に不安がある。

名蔵川(沖縄県)まったく覆土していないので植生は回復しにくい。表面はすべりやすい。
低水部は前面に露出するので水辺が単調になっている。

嘉瀬川高水護岸施工中降雨による堤防損傷箇所の復旧のため施工中。(蓋をしていない状態)
かごの下側には遮水シートで堤防への洪水時の浸透を防止。
この後覆土して前後の堤防同様に芝張を行えば護岸の存在はわからなくなる。

松浦川大川野排水機場護岸高水護岸施工中。低水部は巨石積。
石の間に土が入るよう覆土している。
かごの変形を少なくして施工しやすいよう鉄筋、鉄パイプ、これらの結束のための針金などを使用しているが、線材の錆の原因とならないよう施工後にこうした鉄類は完全に除去しておかなければならない。

多段積タイプ
ふとんかごのように各段は積み上げているのではなくかごは連結されている。下段の上蓋は上段の底を兼ねた構造が一般的。
5分勾配にもできるので従来のブロック積護岸の代替となる。
中小河川では護岸勾配は緩傾斜とするより5分〜1割として河床幅を広くする方が河床での寄り州等により水辺環境が多様化する場合が多いと考えられる。
また、段部があるために覆土しても流失しにくく、植生による陰のできる河岸の淵も形成されやすいと思われる。
5分では十分な厚さの覆土が難しく、乾燥した環境となりやすいが、1割であれば天然河岸同様の植生の早期回復が可能である。

渡嘉敷川(沖縄県)石積護岸の災害復旧で施工されたもの。沖縄特有の白い石で前後の景観ともよくなじんでいる。
上面はかごの蓋が露出しているので覆土するか石を10cmほどでも積み上げるなどすると良かったかもしれない。

六角川護岸施工中1施工例
六角川護岸施工中
中詰石は重機で投入

六角川護岸施工中2人力できちんと石を入れないと蓋が組みにくい様子。段数が多いと下の段ほどきちんと施工する必要がある。
吸い出し防止マットがかごを組む際の邪魔になりやすいので押さえる工夫が欲しい。

六角川護岸施工中3ほぼ完了に近い状態
覆土して前後区間同様に竹が生えれば良いが・・


六角川護岸施工中4覆土完了状況


六角川潮見橋上流災害復旧工事中


六角川潮見橋上流右岸
多段積+覆土


松浦川久里護岸松浦川久里護岸(4K900付近右岸)
平成9年災災害復旧箇所
鋼矢板+根固ブロックの上部にかごマット多段積1割を施工
根固ブロックは捨て石で覆い、かごマットの上に覆土


松浦川久里護岸施工図



施工事例(張タイプ)

施工事例(多段積)


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